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梅田先生のアトピーコラム

皮膚科専門医、梅田二郎先生による、アトピーに関するコラムです。

アトピーコラム第2回 「乳児のアトピー性皮膚炎〜診断と見通し〜」

一歳未満の赤ちゃんを“乳児”と呼びます。今回は一歳までの赤ちゃんのアトピー性皮膚炎のお話です。

診察室でお母さんから前医で「まだアトピーかどうかわからない」という説明を受け、不安になって受診しましたという話をよく耳にします。一般の方はアトピー性皮膚炎に診断基準があることを御存知ない場合が多いので、まず診断基準を簡単に述べてみます。

1.痒みがあること、
2.特徴的な皮疹と分布、
3.慢性・反復性の経過(乳児の場合は2か月以上症状が続く)、
です。この3つを満たせばアトピー性皮膚炎の診断となります。こうして書くと簡単に診断ができそうですが、特徴的な皮疹と分布を診断できるのは皮膚科専門医でないと難しいといえます。

乳児の段階でアトピー性皮膚炎の診断となった場合、ショックを受けられるお母さんが少なからずおられます。その気持ちはとてもよくわかります。しかし以下に述べる将来的見通しをしっかり理解できれば不安も解消されるはずです。

乳児のアトピー性皮膚炎は、生後7、8か月ごろに症状がピークを迎え一歳が近づくにつれて症状が軽快してくるという原則があります。乳児期の重症例の集団と3歳児の重症例の集団が必ずしも一致していないという報告もあります。わかりやすく説明すると赤ちゃんの時期重症であっても幼児期には軽快する子が結構多いということなのです。逆に赤ちゃんの時期軽症または無症状であっても3歳の時点で重症である子もいるということなのです。

乳児のアトピー性皮膚炎のもう一つの大きな原則は、夏は症状が軽く、冬に症状が重くなるという事実です。このため生後7、8か月ごろに冬を迎える春夏生まれの赤ちゃんは大変症状がひどくなる場合があります。そんな場合でも“一歳が近づくにつれて症状が軽快してくるという原則”を知っていれば御家族の不安もかなり軽減されるのではないでしょうか。お母さんをはじめとするアトピーの赤ちゃんの周りの大人をサポートしていくことは、我々アトピー診療に携わる者の重要な務めであると私は考えています。

2010年代に入って、乳児湿疹、乳児アトピー性皮膚炎の治療が不十分だと食物アレルギーを誘発する可能性があるという説が標準的になってきました。炎症を起こして湿疹化した皮膚が舞台となって、食物アレルギーが発症するケースがありますので、しっかりとしたスキンケア(湿疹の状態を長い間そのままにしない)が重要です。食物アレルギーの予防という観点において、皮膚科医に課された課題は大きいと言えます

大変少ない率ではありますが、乳児期から幼児期、学童期に至るまで重い症状が続く方もおられます。そういう方こそ御家族とアトピー専門医が力を合わせ根気よく継続して見守っていくことが必要なのです。

梅田先生のプロフィール

1994年 大阪大学医学部卒業
1994年 大阪大学医学部附属病院小児科
1995年 関西労災病院小児科
1997年 大阪大学医学部附属病院皮膚科
2002年 NTT西日本大阪病院皮膚科
2004年 大阪府立呼吸器アレルギー療センター皮膚科診療主任
2006年 大阪労災病院皮膚科医長
2007年8月 梅田皮膚科院長
梅田先生日本皮膚科学会認定
          皮膚科専門医

医学博士
      梅田二郎


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