梅田先生のアトピーコラム
皮膚科専門医、梅田二郎先生による、アトピーに関するコラムです。
アトピーコラム第4回 「アトピー性皮膚炎に合併しやすい感染症」
アトピー性皮膚炎の患者さんが、「2〜3日前からどんどん皮膚の状態が悪化しています」と受診される場合、アトピー性皮膚炎の悪化だけが原因ではなく、皮膚の感染症(うつる病気)を発症している場合が少なくありません。今回はアトピー性皮膚炎に合併しやすい皮膚感染症のお話です。
数日で皮疹がどんどん増えていく場合は、感染症の合併があるかどうかを鑑別し、抗生剤や抗ウイルス剤の“のみ薬”が必要なケースもあります。はやめの受診が肝要です。代表的な“伝染性膿痂疹”“単純疱疹”“伝染性軟属腫”について解説します。
伝染性膿痂疹は通常“とびひ”と呼ばれる皮膚細菌感染症です。夏季に多い水疱性膿痂疹と一年を通してみられる痂皮性膿痂疹の2型に分けられますが、後述のヘルペスとの鑑別も一般の方には難しく、皮膚科専門医による診察が必要となります。2〜3日の急速な経過で、水疱(みずぶくれ)、痂皮(かさぶた)、がどんどん増えてきたら、早めに皮膚科を受診してください。治療は塗り薬だけでは軽快しにくいことが多く、抗生物質の内服(飲み薬)が必要となりますが、他の医療機関で抗生物質の飲み薬をもらったが効果がないのでと当院を受診されるパターンも少なからずあります。内服抗生物質の選択が重要になってくる難治型伝染性膿痂疹に注意が必要です。家庭では患部を含めたからだのシャワー洗浄(できれば1日2回が好ましい)が良いのですが、子供さんの場合嫌がったり、お母さんが怖がったりで十分に行えていないことが多いことも問題です。“とびひ”にはシャワー洗浄が有効と覚えてください。
単純疱疹は別名“単純ヘルペス”と呼ばれるウイルス感染によっておこる病気です。俗に「風邪の華」「熱の華(ねつのはな)」と呼ばれるのはこの単純疱疹です。口の周りだけの狭い範囲だけでおさまる場合が多いのですが、アトピー性皮膚炎の患者さんの場合(特に初めての感染の場合)顔全体に皮疹が広がり“カポジ水痘様発疹症”と呼ばれる重症型になる確率が高くなります。皮疹は小さな水疱(みずぶくれ)が特徴ですが、掻いて湿疹化してしまったり、カサブタと混じったりしてくると見分けがつきにくくなりますので、やはり皮膚科専門医による診断が必要です。治療は重症度に応じて抗ウイルス剤の外用、内服、点滴となります。
伝染性軟属腫は一般に“みずいぼ”と呼ばれるウイルス性皮膚疾患で乳幼児にできやすく、尋常性疣贅(普通のいぼ)と比べると短期間に広がりやすい特徴があります。直径1〜2mmから数mmまでのドーム状の丘疹で表面に光沢があり真ん中が少しくぼんでいるのが特徴です。時間をかければ自然治癒が見込める疾患であり経過観察するのも一つの方法ですが、集団生活上または家庭内で子供同士感染するため御家族が治療を希望されることも少なくありません。治療は、専用の器具での摘除が基本となりますが、数が多い場合は乳幼児にとってはかなりの苦痛を伴う治療になりますので皮疹が拡がらないうちの“はやめの受診”が肝要です。苦痛を軽減する方法としては、摘除前に局所麻酔作用のあるテープを貼っておく方法、腐食作用を持つ薬剤による外用療法、液体窒素による凍結療法などがあります。みずいぼの個数、お母さんの希望、子供さんの性格を総合的に判断して治療が決定されることになります。みずいぼにも“オーダーメイド”の治療が提供されるべきであると私は考えています。
梅田先生のプロフィール
1994年 大阪大学医学部附属病院小児科
1995年 関西労災病院小児科
1997年 大阪大学医学部附属病院皮膚科
2002年 NTT西日本大阪病院皮膚科
2004年 大阪府立呼吸器アレルギー医療センター皮膚科診療主任
2006年 大阪労災病院皮膚科医長
2007年8月 梅田皮膚科院長