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アトピーの医学的真実
アレルギー科 木俣肇クリニック 木俣肇
医療法人天命会 木俣肇クリニック
私はアレルギー科医で、ステロイドを使わずにアトピーを長年診療しています。アトピーは現代でも原因不明のアレルギー疾患で、ステロイド軟膏の対症療法では、痒みや不眠が改善せずアトピーの方は生活の質が低下しています。私は原因が一つではなく、アレルギーと細菌感染症とストレスが関与していると考え、これらを同時に治療することで改善し治癒しています。ステロイド軟膏で治癒しないことは、既に専門家では常識ですが、その情報が社会に伝わっていません。ステロイドは免疫抑制剤であり、アトピーの症状の炎症反応は一時的に軽減しますが、炎症反応を起こしている原因の細菌感染症は悪化させます。更にアレルギーはIgEという蛋白質で媒介されますが、ステロイドはIgEを増加させます。結果的にアレルギー反応は増強し、症状も遷延し悪化します。この事実が理解されていません。最近はステロイドの効果がないことが判ってきて、他の軟膏を使用する例が多いのですが、プロトピック軟膏やコレクチム軟膏は感染症の悪化や潜在リスクとして癌の発症があります。私は自分の講演会でプロトピック軟膏の発癌性のリスクを訴えてきましたが、実際にプロトピック軟膏による悪性疾患の発症は、海外で多数報告されています。しかしこの事実も社会では認識されておりません。つまりプロトピック軟膏やコレクチム軟膏は、ステロイド軟膏より副作用が強い薬剤なのです。
今の多くのアトピーの治療は、皮膚症状を一時的に鎮静させる外用が主体で、原因であるアレルギーや細菌感染症やストレスを考慮していません。症状は皮膚に出ますが、原因はその他にもあるのがアトピーの複雑さです。だから原因も多くあり特定が難しいのですが、当院ではきちんとアレルギー検査をして、アレルギーそのものを治癒させています。検査も血液検査ではなく、プリックﾌテストと言う皮膚をこする検査で、採血の痛みもなく赤ちゃんから高齢者まで簡単にできます。ステロイド軟膏のみではなく、保湿剤も皮膚の回復力を妨げ感染症を助長し、またやめるとリバウンドを起こすことが判っています。そこで抗アレルギー薬を組み合わせて内服して、保湿剤も使わずカバーのみする治療を考案しました。この治療が非常に有効で、改善と治癒が早まりました。現在はスタッフが非常に素晴らしく、丁寧に説明や指導をしてくれて、チーム木俣として有効な治療ができています。リバウンドを起こしても、治療とスタッフの説明で、身体的かつ精神的にすみやかにリバウンドが治っています。ステロイド中止によるリバウンドは、皮膚症状も悪化したり、体が腫れたり、滲出液が多く出たりして生活に支障がでますが、今でもこういう真実が理解されていません。不思議な事は、ステロイドでアトピーが治癒したという大規模な研究の世界的な論文もないのに、延々とステロイド治療が続いていることです。一方ステロイドを使わないでアトピーが治癒したという論文は、海外の医学雑誌に掲載されていて、エビデンスになっています。アトピーで苦しむ人がステロイドを使わない治療で、治癒してほしいと思います。現在のアトピー治療では、大多数の医療機関でステロイドが処方されますが、医療は多数決ではありません。少数でも理論的かつ経験的に正しい治療が理解されることを願います。
私がステロイドを使わずに治療したアトピーやアレルギー疾患の患者さん達は数万人にのぼります。特にアトピーの方は他府県からも受診され、北は北海道から南は沖縄から、全国から受診されて、頑張って治療を続けた多くの方が改善し治癒しました。しかし、ステロイド塗布が年単位で長い時は、リバウンドも起こし色々な感染症も合併し、改善に時間がかかります。そういう時は、皮膚症状に加えて精神的にも苦痛ですが、当院ではチーム木俣としてスタッフ全員で肉体的かつ精神的苦痛をサポートしています。実際にリバウンドを起こした方の写真も見せて、改善過程を説明し、不安を軽減しています。もともとアトピーは精神的な症状も含み、単なる皮膚疾患と考えるのが間違っています。前述したようにストレスもアトピーの一因で、不眠とか落ち着けないとかいう症状もあります。更に不安や対人恐怖症的な症状もあります。しかし、アトピーが改善すればそういう症状はなくなります。日々誠実でハイレベルな医療をアトピーやアレルギー疾患に対して行い、困っている方々を助けことができれば幸いです。
尚、アトピーは細菌感染症の合併が多いのですが、単純ヘルペスウイルス感染症の合併もよくあります。その場合、播種性単純ヘルペスウイルス感染症（カポジ水痘様発疹症とも言います）となり、全身に広がることがあります（図１と図２）。単純ヘルペスウイルス感染症は口唇ヘルペスでよく知られていますが、カポジ水痘様発疹症は全身の色々な部位に発症します。早く治療しないと更に全身に病変が拡大し、痛みと痒みで生活の質が低下します。さらに家族にもうつる場合があります。しかし、診断されずに延々と月単位や年単位でステロイドを塗布され、改善せず口コミで私の所に来る場合が多いのが実情です。以前に全身のカポジ水痘様発疹症の方が受診されましたが、その方は某大学病院で皮膚の生検までしても診断されず、延々とステロイド塗布をしていました。すぐ診断して内服の抗ヘルペスウイルス剤等を処方した所、すみやかに改善しその後治癒して非常に喜んでいました。色々な状態のアトピーの治療と改善の詳細は、「チーム木俣がアトピーを治す ステロイド・プロトピックフリーによるアトピー治療法」（木俣肇、松籟社）（図３）に写真付きで詳しく書いてあります。心配なのはアトピーの方で、新型コロナウイルスのワクチン接種の後に、カポジ水痘様発疹症を発症される方が非常に多く、以前から当院では問題視していました。文献を調べてみると、新型コロナウイルスワクチン接種または新型コロナウイルス感染で、ヘルペスウイルス科の再活性の可能性があるということです。実際に新型コロナウイルスワクチン接種後に、カポジ水痘様発疹症を発症した例が海外でも報告されました。そのような症状がある方は、すみやかに治療してください。
また、最近気になる食物アレルギーがあります。一つ目は、Pork-cat症候群（豚肉―猫症候群）と言いますが、豚肉と猫の成分が関連しているので、豚肉を食べてアレルギー症状が発症します。症状は軽症のじんましんから重症のアナフィラキシーショックまで様々です。豚肉を食べて異常がある方は注意が必要です。猫にもアレルギーがあり、犬にもアレルギーがある場合があります。当院でもそのような方が受診されましたが、治療でそれらのアレルギーは治癒しました。二つ目は、アルファガルアレルギーと言いますが、通常はマダニに刺された後に発症するアレルギーです。人はアルファガルという成分を体内に持っていませんが、マダニにはあるので刺してその成分を人に注入し、それでアレルギーが発症します。しかしマダニに刺されたことがはっきりしない場合もあります。問題は、アルファガルが牛肉や豚肉や羊肉にあり、これらの肉を食べて上記のような軽症から重症までのアレルギー症状が出ることです。ちなみに鶏肉にはありません。更に、アルファガルはカレイの魚卵にも含まれていて、魚卵を持ったカレイを食べて症状がでることもあります。また一部の薬剤やカゼインや乳製品にも含まれていることがあります。人工的に作られた物を摂取している現代では、次々と新しい食物アレルギーが発症するリスクがあり、注意が必要です。これらはアトピーと合併する場合もあります。診断はプリックテストで疑わしい肉を刺して、その成分をつけたまま皮膚をこすれば判明できます。治療は疑わしい食物を除去し、抗アレルギー薬を継続して内服すれば改善します。じんましんをよく発症するとか、アトピーが改善しない時は、プリックテストをして、疑わしいアレルゲンを見つけることが大切です。治療を続ければ、アトピーもアレルギーも改善して治癒しますので、希望を持って頑張ってください。