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皮膚の生理的な機能が弱い体質について、もう少し詳しく説明してください。

健康な人の皮膚には、次のような生理機能が備わっています。
1・皮膚の保湿能(皮膚表面からの水分の蒸発を防ぎ、皮膚をしっとりさせる力)
2・皮膚の感染防御能(皮膚表面で細菌感染やウイルス感染が起こらないように防御する力)
3・皮膚の損傷修復能(傷ついた皮膚をもとに戻す力)

アトピー性皮膚炎の子どもは、生来、このような皮膚の機能に、弱さがみられます。

1・皮膚に保湿能の弱さ
人を含めて陸上動物は、その昔、水中動物から進化してきたと考えられています。
陸上にあがると、そこは水中とは違い乾燥の世界です。
そこで乾燥から身体を守るために、皮膚に水分を保つ力(保湿能)が発達してきました。
皮膚の保湿能は、a)皮脂b)角質細胞間脂質c)天然保湿因子で成り立っています。
a)皮脂は、皮脂腺より分泌される脂質で、皮膚表面を覆う事により、水分の蒸発を防いでいます。
b)角質細胞間指質は、表皮細胞が産生するセラミドなどの脂質で、角質層のバリア機能を作っています。
しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚は表面の角質層が荒く、水分保湿能が劣るために、乾燥肌(ドライスキン)になりやすくなります。
皮膚表面の湿度は、主に大気中の湿度と発汗によって保たれています。
そのために、大気中の湿度も低く、発汗も少なくなる冬季は、皮膚が特に乾燥しやすくなります。

2・皮膚の感染防御能の弱さ
身体のまわりには、細菌やウイルス・カビなどの様々な微生物が取り巻いています。
微生物が、皮膚表面で、繁殖し、身体に侵入しないように、皮膚には感染防御能が発達しています。
しかし、アトピー性皮膚炎の子どもは、皮膚表面のバリア機能が劣るために、皮膚細菌感染症(とびひ・など)、
皮膚ウイルス感染症(水いぼ・ヘルペス・など)、皮膚真菌感染症などの皮膚の感染症にかかりやすい傾向があります。
皮膚感染症は知覚神経を刺激し、激烈な「かゆみ」を引き起こします。中でもブドウ球菌が皮膚面に繁殖すると、
かゆみ」10倍にもなるといわれています。「かゆみ」のために「掻く」行為を繰り返し、掻く事で皮膚を傷付け、
細菌繁殖にとって、ますます都合の良い条件が作られます。
また皮膚感染症は、皮膚の免疫系に働きかけて、多くのアレルギー担当細胞(Tリンパ球)を刺激し、アレルギー的に
過敏な状態を作るといわれています。

3・皮膚の損傷修復能の弱さ
子どもは生活をしていていく中で、様々な原因で、皮膚にダメージを受けます。
物理的ダメージ(擦り傷・やけど・日焼け・しもやけ・など)、化学的ダメージ(石鹸まけ・軟膏かぶれ・など)、
生物学的ダメージ(虫刺され・など)受けると、その部位から感染しやすくなるために、速やかに皮膚を修復しようとする
力が発達しています。
しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚はダメージを修復する機能が劣るために、容易に皮膚感染を併発することが多くなります。

木村 彰宏(いたやどクリニック 小児科部長)

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