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アレルギーを引き起こす環境刺激について、詳しく教えてください

アレルギーを引き起こす環境刺激は、次の2点に整理することができます。

T・アレルギーの原因となる刺激(アレルゲン)
U・身体を過敏な状態にし、アレルギー感作を成立させやすくする刺激


T・・アレルギーの原因となる環境刺激(アレルゲン)

1・ダニ・カビなどの微生物
ダニやカビは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の主要な原因となります。
ダニアレルギーは、呼吸とともに気管に吸い込まれ、気管支喘息の主要な原因となります。
また皮膚面からも直接侵入し、アレルギー性炎症を起こし、アトピー性皮膚炎の原因となります。
アレルギーになりやすいという遺伝情報をもつ人では、早ければ生後6ヶ月で、ふつう2歳頃にはダニに対する
アレルギー感作が成立します。

2・ペット
ペットのふけや排泄物は、子どものアレルギー疾患の大きな原因となります。
アレルギー感作が成立する年齢を考えると、ダニよりも早い年齢から、アレルギーの原因となる事も少なくありません。
直接皮膚に反応してアトピー性皮膚炎を悪化させたり、気管から吸い込まれ気管支喘息の原因となります。
ペットを飼うのをやめても、3〜6ヶ月の間は影響が残るといわれるほど、アレルギーを引き起こす強い力を持っています。
また、ペットのふけや排泄物は、ダニのエサにもなり、結果的に室内のダニを増加させます。
家庭で飼っていなくても、実家や、よく遊びに行く家庭の室内でペットを飼っている場合には、注意が必要です。

3・食物
食物は出生直後から体内に大量に摂り入れる物質なので、異物として認識される機会も多く、アレルギーの原因となります。
母乳栄養児では、母親が食べる食物蛋白が母乳中に分泌され、子どもの食物アレルギーの原因となります。
人工栄養児では、ミルクに含まれている牛乳蛋白や大豆蛋白などが食物アレルギーの原因となります。
離乳食が始まると、様々な食物蛋白が子どもに取り込まれ、食物アレルギーの原因となります。
乳幼児期は、消化機能も弱く、消化管も未熟なために、食物アレルギーが成立しやすい時期です。
年齢が大きくなると、消化機能や消化管免疫が発達し、食物アレルギーは少なくなります。
しかし、成人になっても、消化機能や消化管免疫が低下すると、食物アレルギーが成立します。

4・花粉などの植物
毎年春になると、花粉症が話題になります。
杉花粉が増加した原因として、様々な説がありますが、花粉は、本来、人には無害なものっです。
無害な花粉を外敵と見なして、アレルギー反応を起こす過敏な体質の広がりこそが、花粉症を増加させている
原因だと考えています。
花粉症の季節には、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患も悪化する事があります。
また室内観葉植物は、果物アレルギーを起こしたり、室内のカビを増加させ、環境を悪化させます。


U・身体を過敏な状態にする環境刺激

5・喫煙
喫煙は、吸っている本人の健康に良くないだけではなく、まわりで生活する人の健康を損なう事がわかってきました。
タバコの煙自身には、アレルギー感作を起こす力はないとされています。
しかし、タール分などが気道内に付着し、気管支喘息などの気道系アレルギーの成立を助長します。
特に乳幼児などの気道系が未熟なものほど、喫煙の影響を強く受けます。
その結果、アレルギーになりやすいという遺伝情報をもつアトピー性皮膚炎の子どもでは、家族の誰かが室内で
喫煙していると、気管支喘息になる危険性が4〜8倍にもなるといわれています。
風邪をひきやすい、風邪をひくといつまでも咳が残る、このような症状のある子どもは、気道系が弱く、過敏に
なっていると考えて良いでしょう。

6・食品中の化学物質(食品添加物・仮性アレルゲン)
食品を加工したり、流通させたりするために、多くの食品添加物が使われています。
食品添加物の中には、摂取するとすぐにアレルギー反応と同じような過敏反応を起こすものもありますが、大部分の添加物では
症状はすぐには現れません。
ダニや食物・喫煙・ペットに比べると、一人の子どもの体に与える影響力は未知数ですが、食事を摂る度に体内に入り、
一生涯影響を与えるものだけに、体の中にできる限り摂り入れたくないものです。
食物のなかには、ヒスタミンなどの「かゆみ」を引き起こす化学物質〔仮性アレルゲン)を、大量に含んでいるものがあります。
調理方法によっては、アレルギー症状が悪化する事があるので、注意が必要です。

7・金属
歯科の治療に用いられる充填剤に含まれている金属、砂場の砂・食物中に含まれている金属、ピアス・時計のバンド・ベルトなどの
生活用品に含まれている金属に対して、身体が敏感に反応する事があります。
また、体の免疫機能を失調させ、アレルギー体質になりやすくする事もあります。

8・室内化学物質
最近の省エネ住宅は、冷暖房効率を上げるために高度に気密化し、自然換気率が以前の住宅の数分の一にまで減少しています。
その結果、ホルムアルデヒドなどの室内の揮発性有機化合物(VOC)による、化学物質過敏症が増えています。
室内の揮発性有機化合物の主な発生源は、壁紙・フローリングの板・新しい家具・それに接着剤です。
特に新築の家屋に引っ越しをした時や、リフォームを行った時には、室内の揮発性有機化合物濃度が高くなっているために、
短期間に大量の揮発性有機化合物の影響を受ける事になります。
化学物質過敏症は、疲れやイライラなどの精神症状のほかに、体を過敏にするために、アレルギー感作を成立させ、
アレルギー症状を悪化させます。
シロアリ駆除の薬品や、除草剤の使用も注意が必要です。

9・屋外化学物質
a)水質汚染
水は、食物や空気とともに、人が生きていくために必要な基本的な物質です。
体の小さな子どもほど体重あたりの必要水分量も多く、水質の影響を大きく受けると考えられます。
また、水は入浴や洗顔の機会に、直接肌に触れる物質ですから、アトピー性皮膚炎の子どもには、大きな影響を与えます。

b)大気汚染
気管支喘息は、大気汚染と強い関連性があります。
工業地帯や交通量の多い道路沿いの住民の気管支喘息の有病率は、そうでない地域の住民に比べると、明らかに高いという
統計が出されています。
毎日呼吸する空気を通じて体が過敏になるために、気管支喘息だけでなく、花粉症などの他のアレルギー疾患も多くなるといわれています。

c)土壌汚染
植物は、土壌や水質の影響を強く受けています。植物を食べて成長する魚や動物は、餌や水質の影響を強く受けています。
そのため、私たちが食物に供する野菜・穀類・魚・肉は、生産地や生産の方法で、栄養価や安全性が大きく違ってきます。
ゴミ処理の過程で発生するダイオキシンなどの化学物質は、人の免疫系に強く悪影響を与えると言われています。

木村 彰宏(いたやどクリニック 小児科部長)

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