文字サイズ

環境を整えるうえで、何に注意すればよいのですか?

私たちを取り巻く環境の中から、健康に良くないと考えられる刺激を取り除く事は大切です。
良くない環境刺激により身体が過敏となり、免疫失調に陥ると、アレルギー疾患の他にも、自己免疫疾患や、悪性新生物(ガンなど)に罹りやすくなります。

1・ダニ・カビなどの微生物
ダニは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の主要な原因となります。
生きたダニは、皮膚の毛穴や角質層の損傷部位から皮膚内に侵入して、アレルギー性炎症を起こし、激烈な「かゆみ」を引き起こします。
しかし、生きたダニには一定の重量があるので、気管支の奥まで吸い込まれる事はなく、直接気管支喘息の原因にはなりません。

一方、ダニの排泄物や、ダニの死虫体は、細かくて軽いために、容易に気管支の奥まで吸い込まれて、気管支喘息を引き起こす強いアレルゲンとなります。
アトピー性皮膚炎だけでなく、気管支喘息などのアレルギー疾患の予防や治療を考えると、生きたダニだけではなく、ダニの排泄物やダニの死虫体を除去する対策が重要となっります。

ダニは、
1・適度な湿度と温度が保たれている場所・
2・エサになるホコリがある場所・
3・卵を産むために潜り込めるフカフカとした場所で繁殖します。

ダニの繁殖に適した場所は、人間にとって住み心地の良い場所といえます。そのためにダニを完全に減らす事は容易では有りません。

ダニアレルギーを本気で治すためには、住み心地を二の次にして、健康的な住まいを優先する事も必要です。
防ダニ対策のポイントは、部屋の床面と、寝具です。
敷きつめの絨毯やカーペットは、ダニの繁殖にとって好都合です。
しかし昔の建て方と違い、風通し悪い床面に敷かれた畳も、ダニの繁殖を助けます。
板も間やコルクの床など、ダニが潜り込んで繁殖できない床面が理想です。
部屋の全てをフローリングにできない場合でも、居間や子どもの寝室はフローリングにしたいものです。
寝具は、人が、長時間を、その中で、過ごす、身近な環境です。
天日干しや掃除機かけなどの日常の管理が大切な事は、いうまでもありません。
また、ダニの排泄物や、ダニの死虫体を完全に除去するためには、洗えるタイプの布団を購入し、定期的にダニを洗い流してしまう事を勧めます。

カビも、アレルギー疾患の主要な原因となります。
夏期は、エアコンの中のカビに注意してください。
冬期は、結露管理が大切です。(除湿器を使う。加湿器は使わない)

2・ペット
いぬ・ねこなどのペットとのおつきあいは、心の癒しにつながる側面があります。そのために、
一概にペットの飼育を否定する訳ではありません。
しかし、ペットの毛やフケがもつアレルギーは、生まれてすぐの子どもを過敏にする、主要なアレルゲンとなります。
その後のアレルギーマーチの出発となります。
一度、ペットアレルギーが成立すると、アトピー性皮膚炎が悪化し、気管支喘息発作が起きるなど、心身共に疲労に
つながる環境刺激となります。
ペットを飼育する時には、できる限り室内に入れない事。定期的に入浴させる事などの注意が必要です。
子どもが小さい時や、アレルギー体質が強い人は、はじめからペットを飼わない方が良いでしょう。

3・食物
アレルギーになりやすい子どもは、授乳中の母親の食事・ミルクの選択・離乳食などについて、注意が必要です。
また、離乳食の問題だけでなく、離乳食の完成期の目標となる大人の食生活も、現代では高動物性蛋白質食・
高脂防食・低繊維食に片寄る傾向にあります。
大人自身の食生活も、健康なものに変えていく必要があります。
加工食品に頼る食生活を改めて、できる限り手作りを心がけ、不必要な食品添加物を避けるようにしましょう。
仮性アレルゲンを多く含む食品の調理方法や、摂取量にも注意して下さい。

4・喫煙
喫煙は、吸っている本人やまわりでで生活する人の健康にとり、「百害有って一利無し」というべきものです。
禁煙が一番の解決法ですが、それが無理な場合には、次の点は最低限守るという心がけをお願いします。

a)室内で喫煙しないようにする。
b)公共の場でも、乳幼児や妊婦の近くでは吸わないようにする。

5・花粉などの植物
花粉症の季節に外出した時は、帰宅後は、すぐに洗顔するようにしましょう。
寝具の天日干しは、花粉症の季節には勧められません。この季節は布団乾燥機をうまく使いましょう。
もし、天日干しをする時には取り入れたらすぐに掃除機をかけて、花粉を吸い取って下さい。
観葉植物は、果物アレルギーを起こしたり、室内の湿度を高めてカビを増やす事があるので、室内で育てない方が良いでしょう。

6・金属
金属による過敏症を合併している場合には、歯科の治療を見直してください。
また、身につける生活用品の金属にも注意しましょう。

7・室内化学物質
新築の家屋に引っ越をする時や、リフォームを行う時には、壁紙、フローリングの板・接着剤に揮発性有機化合物(VOC)が少ない建材を選択するように、建築施工業者と相談して下さい。
また、適度な自然換気率が保てる工夫も必要です。
転居後は、できる限り窓を開けて、十分な換気を試してみる事が大切です。
それでも、化学物質過敏症が疑われる症状が続く時には、揮発性有機化合物を吸着させるタイプの空気清浄機の使用を勧めます。

8・屋外化学物質
水質汚染・大気汚染・土壌汚染など環境汚染は、アレルギー疾患だけでなく、悪性新生物(ガン)や不妊症が増加するなど、私たちの健康や、私たちの子孫に関わる大きな問題です。
環境汚染は、すぐには解決できない問題ですが、無関心ではいられません。

木村 彰宏(いたやどクリニック 小児科部長)

アレルギーの知識と情報

SALES INFORMATION